2018年5月26日土曜日

銀行の自己資本規制 Additional Tier 1、Tier 2 とは何ぞや?

私は、ANZ銀行発行のキャピタル・ノート(ANBHB) を保持しています。

発行は、2015年の4月。

利率は、年7.20%。

償還期限はありません。

証券会社からこの話を聞いた時は、その利率の高さに小躍りしたのですが、普通の債券とは違うので説明書をよく読んで納得して投資するようにと釘を刺されました。

よく読むようにと言われても、ようやく足し算引き算ができるようになった子供が、数Ⅲの教科書を渡されてよく読んでおくように言われたようなものです。

しかし、私にしてみれば大金をつぎ込むのですから、一所懸命読みました。

どうやら銀行の自己資本強化のための方策のようです。

強化されるなら、いいことじゃないですか。

そう思いました。
 
また、他の債券の利回りと比べて利率が高いということは、何かリスクがあるんだということは、言われなくとも分かっていました。

しかし、そのリスクがどうもピンと来ません。

「場合によっては、元本毀損もあり得ます」

と言われても、

「まあ、念のためそんなこと言ってるんだろうけど、天下のANZ銀行だから大丈夫だろう」


「場合によっては、ANZ銀行の株式に転換される場合があります」

と書かれてあっても、

「ANZ銀行の株式に転換されるなら、別に構わないな」

そんな感じでした。

実際に購入して早3年、3か月ごとに何事もなく利息が入金されています。

債券価格も、$1.0000が 今日現在$1.0575と値上がりしています。

しかし、それはそれとして、ミリオネアをめざす身としては、銀行の自己資本規制についてぐらい知っておかなくてはなりません。

そう思ってちょっと調べてみました。

これがまた中々分かりづらいのですが、今回は基本の基本をおさらいしたいと思います。

1988年にバーゼル銀行監視委員会が設立されました。

銀行の資本力を強化することによる、国際金融市場の安定性の向上が目的です。

その時決められたルールがバーゼル規制と言われるものです。

そういえば、サラリーマン時代に、

「BIS規制で自己資本が8%以上ないといけないので、それはちょっとあれですね」

などと、詳しいことは何も知らないくせに、知ったかぶりして話したことがあるのを思い出しました。

恥ずかしい限りです。

その後、2004年にリスク捕捉の精緻化のためにバーゼルⅡ規制となり、2008年の世界金融危機の後、その反省を踏まえて2010年に現在のバーゼルⅢ規制に強化され、現在はまだその過渡期だとのこと。

バーゼルⅡ、Ⅲの規制で自己資本と認められるのは、次の3つです。

・(Common Equity) Tier1:普通株、内部留保など

・Additional Tier1:優先株、永久劣後債など

・Tier2:期限付き劣後債、一般貸倒引当金など

ANZ銀行のキャピタル・ノート(ANBHB) は、Additional Tier1の永久劣後債に相当するようです。

Tier2債は、実質破綻時のみ元本の毀損リスクがあるのに対して、Additional Tier1債は、それに加えて自己資本比率などを基準に設定されたトリガーを下回った場合にも元本毀損リスクがあるとのこと。

また、発行体の裁量によって利払いが停止されるリスクがあるのもAdditional Tier1債。

より厳しいです。

2008年の世界金融危機の時には公的資金が注入されましたが、また同じような事態が起きた時には、その前に永久劣後債の価値をゼロにするということです。

「Loss absorbing」(損失の吸収)の役割です。

銀行の自己資本強化のためならいいじゃないか、などと思ったのは何とも浅はかで、その強化は私のような債権者の犠牲によってもたらされる訳です。

ANZ銀行なら大丈夫だろうなんて思っていましたが、ちょっと恐ろしくなってきました。

また、ANZ銀行の株式に転換される件についても、考えてみれば、破綻の危機にある銀行の株主になっても、嬉しいことは何もありません。

想像力の欠如で、かなり甘く考えていました。

破綻しないにしても、危機の場合の利払いは、銀行預金や普通社債が優先され、永久劣後債は優先順位は下から二番目(一番下は普通株式の配当)となります。

だからこその、高金利だった訳です。

ちょっと恐ろしい内容でしたが、知らないでいるよりも、知っている方がずっとよいです。

これで、銀行の自己資本規制のニュースを見た時に、より理解ができそうです。

それにつけても、思うこと。


どうか、金融危機など起きませんように。


















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