(本筋とは関係ありませんが、2018年4月-9月の期間を2019年度上期と呼ぶことに違和感を覚えるのは私だけでしょうか)
具体的な内容に入る前に、捕捉説明があります。
ゼットエナジー(ZEL)は、2つの決算数字を発表しています。
とは言っても、表帳簿の他に裏帳簿を付けている訳ではありません。
法律で決算発表に求められている方式と、石油業界特有の方式によるものです。
前者は取得原価方式(Historical Cost=HC方式)と呼ばれ、後者は再調達原価方式
(Replacement Cost=RC方式)と呼ばれています。
HC方式は、原油や製品の調達に際して実際に支払った額を原価とするのに対して、
RC方式は、石油製品を販売した月と同じ月に、あたかも原油や製品を調達したように原価を調整します。
と書きつつ、私もどうやってそんなことをするのか分かっていませんが、要はそうすることによって在庫評価に原油や製品の価格変動の影響を及ぼさないようにすることができ、業績把握を適切に行うことができるのだということです。
以上を踏まえて、それでは本題に入ります。
まずは、法律に基づいた取得原価方式(HC方式)による数字を見てみましょう。
百万ドル | ||||
2018H1 | 2019H1 | 増 減 | % | |
売上 | $2,086 | $2,674 | +$588 | +28% |
営業利益 | $187 | $280 | +$93 | +50% |
純利益 | $80 | $139 | +$59 | +74% |
この数字だけを見ると、アダーン首相の「石油会社は儲け過ぎではないのか」という批判も一見的外れではないように見受けられます。
しかし、実際には、最近の原油価格、製品価格の高騰によって在庫評価価格が上がっただけの見かけの利益でしかありません。
それでは、在庫評価要素を取り除いた実態はどうなのでしょうか。
ということで、次に再調達原価方式(RC方式)による数字を見てみましょう。
百万ドル | ||||
2018H1 | 2019H1 | 増 減 | % | |
売上 | $2,086 | $2,674 | +$588 | +28% |
営業利益 | $221 | $175 | ($46) | -21% |
純利益 | $105 | $72 | ($33) | -31% |
一株利益 | $5.30 | $3.70 | ($1.60) | -30% |
売上は、経理処理の違いでも変わらないので、前方式と同様に前年同期比で+28%の伸び。
それに対して利益の方は、営業利益で▲21%、純利益で▲31%、その結果一株利益も▲30%と、それぞれ大幅減益となっています。
あらら、とんでもないことになっています。
原因としては、
1.原油高、ニュージーランドドル安、石油製品にかかる新税導入の三重苦によって販売価格が上昇し、一般消費者の需要が減ったこと、
2.その中で、一般消費者が低価格を追い求めたことから、他社との価格競争が激化ししたこと、
3.予期せぬ製油所のシャットダウンがあり、割高な製品輸入が増えたことによって、マージンが圧縮されたこと、
が挙げられるとのことです。
アダーン首相、聞いてますか?
決して儲け過ぎだ、などということはないのです。
この傾向は下期も続くと見込まれ、2019年度通期の営業利益ガイダンスも、420百万ドル~455百万ドルから、400百万ドル~435百万ドルに引き下げられました。
この決算発表を受けて、当然のように株価も急落しています。
11月1日の終値は、前日比▲$0.57の$5.53と、▲9%を超える急落です。
ただし、これからいいことも多少はあるようです。
スーパーマーケットのニューワールドやパックンセーブを手掛けるフードスタッフ・グループへの年間150千キロリットルの納入や、レシートの割引対象になったのも、この9月に始まったばかりです。
効果が表れるのはこれからです。
また、配当も、支払いの基準がフリーキャッシュフローの90~100%相当に変更になったことから、前年同期の10.4セントから12.5セントに+20%引き上げられます。
問題は、現在の状況がこれからもずっと続くのかどうか。
それとも、これは一時的なもので、長い目で見れば絶好の買い増し時なのか。
何しろ高配当銘柄ですからとても気になります。
ということで、これからも色々と情報を集めてみたいと思います。
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